MEGANEROCKの原点と、KOREMO。
今回サンデーマウンテンでの「KOREMO」の販売開始にあたり、メガネロックさんの作業スペースにお伺いしてきた。
福井県鯖江市はメガネの生産が日本一と言われている。メガネだけでなく伝統工芸品を作る職人が多い町でもあり、今もなお鯖江市ではメガネ職人がこだわりのメガネを作り続けている。そんな鯖江で、メガネロックの「KOREMO」は生まれた。
福井県鯖江市に、鹿児島のアパレル会社で働いていた雨田大輔さんがメガネ職人を志して移住し、7年間の修行後の2014年に個人でブランドを立ち上げた。それが「MEGANEROCK(メガネロック)」。
眼鏡職人としての7年間の経験を活かし、デザイナー兼クラフトマンの雨田さんが、デザインからメガネを製作する全行程を一人で手がけている。これまでに、代表的なアセテートを使用した「ベクター」シリーズなど様々な個性的なデザインの眼鏡があり、雨田さんの人柄や愛情やこだわりがとても伝わる。
MEGANEROCKの原点
個性あふれるメガネロックのメガネは、どこから発想が生まれるのか。
「基本的には自分が身につけたいものを、好きなものを作る。」が雨田さんのものづくりのポリシー。 昔からCDジャケット・映画をよくみていて、ビジュアルやファッション的な部分の影響を大きく受けているのが、アパレルで働いていた雨田さんだからこその視点と感じる。
メガネロックたちあげ当初は、メガネを持って営業にいっても「面白いんだけどね」とは言われたけれど、反応はあまり良くなかったとか。反応をふまえて無難な型を作って再び営業に行った。しかし、帰りの電車で「何やってるんだろう。別にこの人たちに買ってもらうために作ってるんじゃない…」と自分の中での疑問や葛藤がうまれ、その後すぐ営業をやめて作りたいものをつくり続け、今に至るとのこと。
「今だから、それで上手くいったって話せるんですけどね。」と雨田さんは笑いながら話す。
お話の合間にふと作業スペースを見渡すと、雨田さんが自分でステッカーを貼ったり文字を書いたりしてオリジナルで味のある機械がならんでいる。窓や壁には、所狭しとメガネをかけた人の顔が描かれた紙も貼られている。これまでの経緯などのお話を聞くと、人との縁やタイミングもすごく大切にされている方なんだと感じた。
好きなものや愛着のあるもの、職人として尊敬や刺激しあえる人たちのそばで、雨田さんは日々好きなメガネを作っている。
コレも、MEGANEROCK
さて今回新しく出た、手のひらサイズに折り畳めるサングラス「KOREMO」にクローズアップしよう。
雨田さんは、今回デザインを手掛けている。
鯖江で出会ったメガネ会社さんの技術と、雨田さんのデザインがコラボして生まれたメガネが「KOREMO」。いつもは、雨田さんがほぼ一人で仕上げていくので、デザインからの工程は雨田さんの頭の中で進む。しかし今回は、メガネ会社側との共同作業で3Dプリンタでのモックを作成して、「かけて動いても痛くない」「フィット感がある」などを考慮したデザインの微調整が細かく入っている。
新しい素材とデザイン
セルロイド素材やアセテート素材を使ったこれまでのメガネロックとは違う、ナイロンのメガネ。通常のアウトドアやスポーツのシャープなデザインのサングラスとは違う、メガネロックの個性的な特徴をそのまま残したクラシカルなデザイン。
ナイロンは弾力性とソフトさを持った素材なので、かけていてもズレにくくフィット感がある。とても軽量なので、普段づかいはもちろんのこと運動や山登り・アウトドアにとてもよく合う。
メガネロックらしい名前
これまでは、ファッション性が高かったメガネロックが、タウンユースだけでなくアウトドア・スポーツにも使えるメガネを作った。これまでのものとは、コンセプトは一風違うけれども「コレも」メガネロックのメガネという意味で「KOREMO」と名付けられた。
メガネロックの中でも珍しいデザインの「KOREMO」だが、ファンならひとつは持っておきたくなるだろう。
こだわりのパーツが、
かけ心地の良さのすべて。
既存の折りたたみのメガネと違う物を作りたい。という想いで作られた「KOREMO」は、ただ折り畳めるだけではない。よく見ると、いくつものパーツがつなぎ合わされてできている。そのひとつひとつに、細かな配慮がされている。
「KOREMO」は、パーツごとで注文して交換ができるので、もし破損してもパーツごとで修理が可能なつくりになっている。
凹凸のない直線に
メガネのウデ部分も2つのパーツに分かれている。
通常折りたたむだけの継ぎ手では、メガネをかけたときに継ぎ手のパーツが出っ張って顔に当たってしまう。これでは、メガネをかけていても不快感を感じてしまう。
そこで普通のメガネのような直線になるよう、継ぎ手部分を埋め込んだ設計をした。厚みも調整し、凹凸のないウデに仕上げた。凹凸が無くなったことにより、顔に当たることもなくなった。
同様に、ブリッジ部分にもパーツをいれて畳めるようになっている。
しかし、かけてみるとその部分が表面からは見えず、継ぎ手があるようには見えないためデザインが損なわれない。
例えるなら、ヒーローもののプラモデルを作るときに小さいABSパーツが関節に組込まれていて、関節をスムーズに動かす細工があるのだがその細工によく似ている。
素材の良さを活かす
「KOREMO」はすべてナイロン素材で出来ているので、とても軽いし柔らかい。
しかし今までのアセテート素材とは違い、ナイロンのツヤがでた状態はとても安っぽく見えてしまうため、全面マットなつや消し状態にした。マットにしたことにより、肌への当たりもソフトになる。
鼻あては今までのクリングス型とは違い「鼻盛り」の形状に。衝撃で変形したりせず、動いてもソフトな当たり具合で痛くなりにくいし、折りたたんでも邪魔にならない。折り畳んだときの形状は、どの角度からみても美しい。
そしてウデを畳んでも、パーツがレンズに全く当たらないようになっている。
こだわりが詰め込まれたカラー
カラーは、Type1は落ち着いたクリアグレーとデミ。
男性がより好みそうなカラーで、光の当たり具合により、少しだけ透過するので色の変化が楽しめる。
いつものメガネは、もともと模様が入った生地材料から切り出して製作するのだが、ナイロンの工程は型に素材を流し込んで固める金型成形なので模様がない。
デミはもともとの素材の色は明るめのブラウン一色。そこに職人が手作業で筆で色を重ねてベッコウのような柄が出来上がっている。手作業なため、同じものは一つもない。
すでに「KOREMO」の次の色を検討していた雨田さん。作業スペースには、何色かの試作品がおいてあった。
次回は、もっと明るいカジュアルなイメージの色合いをと考えている。メガネロックのメガネは、小さめのレンズサイズで女性がかけても大きすぎないので、女性にもかけてもらいたい。アウトドアはもちろんのこと、「KOREMO」もファッションの一部として普段から使って欲しいと雨田さんは言う。
取材をしてみて
ものづくりをする人や、モノやコトを提供する側の大事な部分である「好きなもの、欲しい物をつくる、楽しむ」という根本的な部分をあらためて考えさせられた。
出会った人との縁を大事にしながら、自分の好きなメガネを大切に作っている雨田さん。
人間味あふれる雨田さんの手で、みんなが身につけたくなるような愛されるメガネが作られているのが、取材をとおしてひしひしと伝わった。雨田さんの笑顔が一番それを物語っている。
今回の「KOREMO」のように、メガネロックのメガネひとつひとつのお話を聞きたいと思えた。これからまた、メガネロックからどんな新しいメガネが生まれるのかとても楽しみだ。