■開発ノート - PCT 4200kmを歩いて感じたこと
ウールは優れた特性を持つ一方で、チクチク感や耐久性の課題があります。
MIYAGENでは、ウール100％にこだわりながらも、これらのデメリットを克服することに挑戦しました。
・ウールのメリット
高い保温性と吸湿性
防臭・殺菌作用
優れたUVカット性能
・ウールのデメリットと克服
チクチク感 ：「Super 120」の繊細な糸を採用し、しなやかな着心地を実現。
耐久性の低さ： 特殊な多重防縮加工を施し、摩耗耐性を向上。
速乾性の低さ ： 吸湿速乾性を最大限引き出す加工を実施。
このウールの完成度は、パシフィック・クレスト・トレイル（PCT）4200kmを歩いた経験から確信しました。

■厳選されたメリノウール
MIYAGENのウールは、100年以上の歴史を持つイタリアの老舗生地メーカーの「Super 120」メリノウールを採用。ニュージーランドの自社牧場で原毛を調達し、紡績から生地織りまで一貫生産。環境にも配慮し、染料の分解・太陽光エネルギーの活用など、持続可能な生産を行っています。

■ウールの構造と機能
ウールは「キューティクル（スケールや鱗とも呼ばれる）」が存在ます。
このキューティクルが水を弾き、その内側の「コルテックス」が水を吸収する特性を持っています。
この複合的な構造により、ウールは独特な多層構造を形成しています。
・水を弾きながらも水を吸収できる
・濡れても暖かい
・汚れがつきにくく、難燃性がある
・形状記憶性に優れ、伸縮性が高い
・糸を紡ぎやすい
ウール本来の特性を維持しつつ、防縮加工を工夫。
縮みにくく、毛玉ができにくい生地に仕上げました。
さらに、乾燥機にも対応可能です。

■キューティクルを残した複数工程にわたる特殊な防縮加工
キューティクルやスケールには、もう一つの重要な特性として「フェルト化性能」があります。
ウールは水分を吸収するとスケールが開き、周囲のウール繊維と絡みやすくなるため、フェルト化が進みます。
洗濯でセーターが縮む原因は、このスケールが開く現象にあります。
また、バックパックの背面はフェルト化が進行しやすい条件が揃っており、この現象がアウトドアの場面では厄介な問題となり得ます。
ウールには防縮加工を施しますが、スケールを過剰に取り除いてしまうと親水性が強まりすぎ、ウール本来の特性を損なうことがあります。
一方で、樹脂コーティングを施す手法では、ウール特有の利点が半減してしまいます。
そこで、MIYAGENのウール製品には、綿、糸、生地の各段階で複数の工程を経た「多重防縮加工」を施しています。
この特殊な多重防縮加工により、吸湿速乾性、通気性、保温性、抗菌防臭性など、ウールの持つ特性を最大限に引き出すことが可能となりました。
さらに、この加工によって、バックパック背面でも縮みや毛玉が発生しにくく、摩耗耐久性にも非常に優れた生地が実現しました。
加えて、この優れた多重防縮加工により、一般的な電気式やガス式の乾燥機を使用した洗濯後の乾燥にも対応できるようになっています。

■ロングトレイルのためのデザイン
・立体裁断フード
強い日差しや風を防ぎ、フードを被っても涼しい
3ピース構造で頭にフィットし、視界を妨げない
ゴム紐付きで調整可能、洗濯時の絡まりも防止

・カンガルーポケット
手を温める「マフポケット」として機能
ペットボトルを入れて体を冷やしたり、cold mealの調理にも活用可能
全パーツをウールで統一し、保温性を最大化

・シルエットと機能性
体を動かしやすいオーバーサイズ設計
後身頃を長くし、しゃがんでも捲れにくい
リブ付きの袖で、腕まくりがしやすい